薺句帖

余生の洩らし言、「薺」とは、「なずな」あのペンペングサであります。誤字脱字の常習ゆえ、気になさる方にはお勧めできません。

夜明けの蝉・夕立は気配だけ・まどさんのセミ

7月26日 快晴猛暑。39度を越える。

 

〇朝5時ごろ、トイレに起きると、既に日の出は過ぎていて、家中に籠った昨晩からの熱気が襲ってくる。7月に入ると毎晩エアコンをかけて寝ているので、寝室から出たとたんに、むっわっと蒸し暑さがやってくる。

 昭和の家であるから、トイレには目の高さに小窓があって外を覗けるのであるが、細めに開いている窓から蝉の鳴き声がうわーんと襲ってきた。蝉が一斉に鳴くのを蝉時雨というが、寝ぼけ眼で用を足しながら聞くそれは蝉時雨なんていう美辞も思い浮かばない騒音であった。朝の鳥たちのさえずりを圧倒する大きさであった。

 ただ、これはすごいぞと、感心した。こいつらは全力で鳴いている、すごいなと、老骨はつぶやいて、寝床に戻って、寝た。ほぼ二度寝ということだ。

 

しののめや厠の小窓蝉時雨    泡六

 

夜明けぬ羽化し損なふ奴もあれ

 

蝉鳴いて驚きたるか厠神

 

7月27日 快晴。最高気温39.1度。

 

〇夕立の気配。風が出てきた。北の空が灰色の雲で覆われた。西北方向では積乱雲の峰。で、散歩は中止。少し丁寧に、足のストレッチをする。

〇ネットフリックス配信の「Good Doctor」は、自閉症の若い外科医のドラマであるが、そのシーズン4は、新型コロナウイル感染が拡大し始めた時期のアメリカの医療現場の緊迫をよく伝えている。忘れてしまったあの頃を思い出された。なんと忘れっぽいことか。一部では、この夏の感染拡大が不安視されているというのに。それでも、ショッピングモールあたりでも、まだ八割方はマスクを着けている。

〇結局、雷はやって来ず。畑の作物はすっかり勢いが無い、是非とも一雨ほしかったのであるが。

 

谷川俊太郎編の「まど・みちお詩集」(岩波文庫)は手近かにある本箱に置いてあって、つい手に取るものだ。とてもいい本だ。その編集の姿勢がすばらしい。

 「セミ」という作品がある。昨日、トイレで聞いた蝉の声に、つまらん句を付けたがのであるが、まどさんのセミは、土の名から生まれ、太陽から祝福された命であった。

そうして、セミはこう鳴いている。

 

たいよう ばんざい ざいざいざい

たいよう ばんざい ざいざいざい

 

 


セミ (gifu-u.ac.jp) より