薺句帖

余生の洩らし言、「薺」とは、「なずな」あのペンペングサであります。誤字脱字の常習ゆえ、気になさる方にはお勧めできません。

武蔵丘陵の梅林で。

 

 一昨日は、春麗というにふさわしい一日であった。

 昼食を早めに済ませて、通いなれた森林公園へでかけた。

 目当ては、今が盛りであるはずの梅林を歩いてみることだった。

 梅は、紅梅も白梅も期待通りに咲いていて、花の香りもそよ風にのって揺蕩ごとしという感じだった。

 もう十年来この公園をふらりふらりと散歩するのを楽しみにしているのだが、初期のころに比べて、訪れる人が格段に増えてきた。特に、コロナの流行以後である。「三密」を避けよとの大号令があったので、ここは何といっても広大な公園であるし密を回避しながらリフレッシュするには格好な場となったせいだろう。

 そんなこともあって、その日も梅林をそぞろ歩く人は少なくはなかった。

 

 

梅林に昔の人に似たる人   泡六

 

梅林やたずね来る人去ぬる人

 

梅が香や人ごとに憂きを忘れけん

 

 

 

 

  

 

 梅林は、公園の南口からが近く、そこから野草コースに向かい、セツブンソウやらキクザキイチゲなどを見て、椿園を通り抜けて、時折野鳥との出会いないかと立ち止まったりしたのだった。

 その野草コースで、キクザキイチゲが咲いている斜面に目を凝らすと、今見ごろのイチゲの花に遠慮するかのように、小さく花をもたげているカタクリを見つけた。いち早く咲いたカタクリである。

 

武蔵野にはやかたくりは咲きにけり

 

ひょろり首をもたげしかたくりの

 

沓音に浮世を知るやかたくりは